赤ちゃんの頭の形施術と法律:施術を受ける前に知っておくべきこと
最近、整体院による被害が多数寄せられる様になってきました。
【このページは弁護士による監修の下書かせていただいております。ページの性格上、専門用語や法令の条文が使用されています。】
はじめに:令和7年、整体院に対する判決が下りました
2025年9月24日、仙台高等裁判所(令和7年(ネ)第154号判決)は、理学療法士スタッフが施術を行う整体院に対し、近隣のあはき師が差止請求を行った訴訟において注目すべき判決を下しました。
※差止が認められた表現は「整体と医学の両方から根本改善」というものでした。裁判所はこの表現について、
「一般消費者をして、本件整体院が医行為と同様の科学的根拠があり、又は医行為と同様の効果若しくは医学に基づく治療行為を補完する効果がある旨などの誤信をさせるもの」
と判示しました。
この判決と、同年2月に施行された「あはき柔整広告ガイドライン」(厚生労働省、令和7年2月18日)を合わせて読むと、症状名の記載制限や本来業務に関する縛りが一層明確になりました。
赤ちゃんの頭の施術を検討されている方に、この機会に法律の構造を正確にお伝えしたいと思います。
1. マッサージ師は何ができる資格なのか
業務の根拠
あん摩マッサージ指圧師(以下「マッサージ師」)の業務は、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(昭和22年法律第217号、以下「あはき法」)第1条に定められています。
あはき法第1条
医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許を受けなければならない。
この条文は「マッサージ師ができること」を定めると同時に、
マッサージ師以外の者がマッサージを業とすることを禁止
する規定でもあります。
マッサージ師の業務の本質は「治療」です
マッサージ師の施術の本質は、厚生労働省が公式に定義しています。
令和3年11月26日 厚生労働省労働政策審議会 労働条件分科会労災保険部会
より:
「徒手により、あん摩、マッサージ、指圧の各手技を用いて、機械的刺激を生体に加え、生体の変調を調整し、 疾病の治療や保健の目的を果たす施術 」
「疾病の治療」という言葉が、厚生労働省の公式文書に明記されています。マッサージ師は治療を行う職種です。
施術部位に制限はありません
あはき法の条文を確認すると、
施術部位を制限する規定は存在しません。
禁止されているのは「外科手術・薬品投与」(あはき法第4条)と「医師の同意なしでの骨折・脱臼患部への施術」(あはき法第5条)のみです。頭部・頸部への施術を禁じる規定は存在せず、乳幼児の頭部へのマッサージはマッサージ師の適法な業務の範囲内です。
マッサージには「矯正作用」が認められています
マッサージ師の養成施設で使用される教科書「基礎保健理療Ⅱ(保健理療理論)」には、マッサージの作用として次のように記されています。
「 矯正作用 ……マッサージ施術により加えられた力により、身体の形態的および機能的な異常を正常な状態に戻そうとするもの」
さらに、厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)も、マッサージ師の業務として
「 脊椎のゆがみを矯正 することにより、症状の緩和・改善、体力回復、健康増進を図る」
と明記しています(jobtag「あん摩マッサージ指圧師」の項)。
矯正作用を持つ施術として日本の法律上認められているのは、マッサージ術だけです。「べびきゅあ」では、この矯正作用に基づいて頭蓋形態へのアプローチを行っています。
2. 「医業類似行為」という概念と法律の構造
医業類似行為とは何か
「医業類似行為」について、厚生労働省は国会答弁(第198回国会 答弁書第62号、令和元年5月31日)で次のように正式回答しています。
「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある『医行為』ではないが、 一定の資格を有する者が行わなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為 」
この定義から、医業類似行為には二種類あることがわかります。
法に定めのある医業類似行為:
マッサージ師・鍼灸師・柔道整復師が行うもの。国家資格と3年以上の専門教育が必要です。
法に定めのない医業類似行為:
整体・カイロプラクティック・オステオパシーなど。これらは「人体に危害を及ぼすおそれのある」行為に該当します。
あはき法第12条:最も重要な禁止規定
あはき法第12条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。
この条文の構造を正確に読むと、「第1条に掲げるもの(=マッサージ師・鍼灸師)を
除く外
、医業類似行為を業としてはならない」とあります。つまりマッサージ師は、この禁止規定の
例外
として明示的に保護されている立場です。
整体師・無資格者は、この第12条によって「業としてはならない」とされています。「当院の施術はマッサージではない」「軽く触れる程度だから問題ない」という主張をする事業者がありますが、問題の本質はそこではありません。
彼らはそもそも「業としてならない」のです。
3. 各資格の法的位置づけ:知っておくべき重要な違い
理学療法士の場合
理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号)第15条第2項は次のように規定しています。
「理学療法士が、 病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて 、理学療法として行なうマッサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第一条の規定は、適用しない」
この条文を読むと、理学療法士がマッサージ行為をあはき法の適用外で行えるのは
「病院・診療所の中で」
または
「医師の具体的な指示を受けて」
という条件を両方満たす場合のみです。
今回の仙台高裁判決もこの構造を前提として確認しており、病院外・自費での施術の文脈では理学療法士であってもあはき法の適用から外れません。
理学療法士が持つ知識・アセスメント能力は非常に有用であり、その点は高く評価されます。ただし「施術行為を行う権限」と「知識・能力がある」ことは別の問題です。自費サロンや出張施術において医師の具体的な指示なしに乳幼児の頭部に手技を行うことは、資格の本来業務の範囲外となります。
柔道整復師の場合
柔道整復師の業務範囲については、令和2年11月16日の厚生労働省労働政策審議会 労働条件分科会労災保険部会が明確に定義しています。
「骨・関節・筋・腱・靭帯などに加わる 外傷性が明らかな原因によって発生する骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対し 、手術をしない『非観血的療法』によって、整復・固定」
さらに同資料は、
「最近は骨盤矯正や脊椎矯正、頭痛や冷え性、単なるマッサージなどを行う接骨院や整骨院がありますが、 これらは柔道整復師の業務範囲ではありません 」
と明記しています。
また、柔道整復師法成立前の通知(昭和32年9月18日 医発799)は、
「柔道整復師が、単にあん摩(指圧及びマッサージを含む)のみの治療を必要とする患者に対し、その行為のみを行うことは法第1条の規定に違反する」
と明記しています。
「接骨院ではなく整体院として営業しているから柔道整復師法の範疇外だ」という主張をする事業者がありますが、資格を保有している以上、その資格が定める業務範囲の外に出ることはできません。
助産師の場合
助産師の業務は
「助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導」(保健師助産師看護師法第3条)
に限定されており、乳幼児の頭部への施術を業務として行う法的根拠がありません。
助産師の方々が母子ケアに深く関わる職業であることは間違いなく、その知識と経験は貴重です。ただし施術行為そのものを行う権限という点では、現行法の枠組みの中でできることに自ずと限界があります。
無資格者の場合
あはき法第12条により、マッサージ・鍼灸・柔道整復の資格を持たない者が医業類似行為を業として行うことは、明確に禁止されています。
乳幼児の頭部への施術については、平成28年神戸地裁判決(キッズスタディオン事件)が重要な医学的事実を認定しています。裁判所は
「迷走神経反射は頸動脈洞に
5秒程の刺激でも十分に起こり得る
」「生後4か月の乳児は腹式呼吸をするが胸腹部が圧迫されることで横隔膜が動かし難くなる」
「乳児の胸郭は柔らかく肺が外力から圧迫されやすい」
という医学的事実を認定しました。
乳幼児の頭部・頸部施術における危険性は、司法がすでに認定した医学的事実として存在します。「今まで事故はない」「軽く触れる程度だ」という説明は、この司法判断の前では根拠になりません。同判決は「施術回数が数千回に及んでも、危険性の予見可能性は否定されない」と明示しています。
4. 広告表現でも確認できます
令和7年2月に施行されたあはき柔整広告ガイドラインにより、施術所が広告に掲載できる事項は厳格に限定されました。
適法な広告に書けるのは、施術者の氏名・資格名・施術所の所在地・施術日時・費用などです。症状名・効果の断言・治療成績などは記載できません。
このガイドラインの枠組みから見ると、「斜頭症矯正」「頭の形改善保証」「〇〇症状に対応」といった表現を広告に掲載している施術所は、ガイドラインに抵触している可能性があります。また、仙台高裁判決が示したように、「医学と整体の融合」「科学的根拠に基づく施術」という表現も差止の対象となり得ます。
逆に言えば、
適法な施術所は広告表現が限定的に見えることがあります。
派手な効果の約束や多数の症状名の列挙がある施術所ほど、法的なリスクを抱えている可能性があります。
5. まとめ:施術を受ける前に必ず確認してください
以上を整理すると、赤ちゃんの頭の形に関する施術を適法に行えるのは、現行法の枠組みでは次のように整理されます。
マッサージ師:
あはき法第1条・第12条により、頭部を含む全身へのマッサージを業として行う権限を持ちます。矯正作用も認められています。
理学療法士:
病院・診療所内かつ医師の具体的指示がある場合のみ、マッサージ行為があはき法の適用外となります。
柔道整復師:
外傷性の急性損傷への対応が業務範囲であり、頭蓋形態へのアプローチはその範囲外です。
助産師:
助産および妊産婦・新生児への保健指導が業務であり、乳幼児の頭部施術を業として行う法的根拠がありません。
無資格者(整体師等):
あはき法第12条により明確に禁止されています。
赤ちゃんの頭の形の施術を検討されている方は、施術者に対して必ず次の一言を確認してください。
「マッサージ師(あん摩マッサージ指圧師)の資格をお持ちですか?」
この質問に対して明確に「はい」と答えられない施術所での施術は、法的根拠のない施術である可能性があります。
「べびきゅあ」は、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持つ施術者が、法的根拠に基づいて乳幼児の頭部施術を行っています。
施術に関するご質問はお気軽にお問い合わせください。
※このページは弁護士による監修を受けて書いております。 【監修者】弁護士 水上博喜 水上総合法律事務所 東京弁護士会監事、中小企業法律支援センター広報部会長などを歴任
※仙台高裁判決は、令和8年2月12日、最高裁判所第一小法廷において上告棄却・上告不受理の決定がなされ、裁判官全員一致で確定しています。
※ここに書かれている内容は厚生労働省医政局医事課、日本理学療法士協会、日本助産師会、日本柔道整復師会並びに日本あん摩マッサージ指圧師会などに2025年10月以降に問い合わせを行った内容をもとに書かせていただいております。書いてある内容に問題等ありましたらお知らせください。内容を確認した上で修正もしくは削除を行います。






